ストライクゾーンど真ん中に豪速球で投げ込む感じのフランス料理って、今ならどこに行けば食べられるのか。
これは結構な大問題です。
作り手としては、食べた事ない料理を作れと言われる事ほど酷な事はありません。今の若手コックさん達はどうやって情報と現物の答え合わせをしているんだろう。
惣菜屋に本腰入れるようになったからこそ、クラシックの灯は消さずに守り続けたいところ。
料理とは完成品が全てであって、そのプロセスは完成品に対する確固たる意思と思想があってこそ、プロセスにこだわることができます。
例えばテリーヌは仕上がりのイメージがまずあって、そこから配合や手順の微調整、断面の美しさを逆算して材料を切るところから始まります。
ガルニと呼ばれる具材の大きさや配置、味のバランスを考え、ファルスというツナギの味わいと配合をどうするのかという無限の組み合わせを自分というフィルターを通す事でオリジナリティが最終的な断面と味わいに凝縮されます。
これはどの分野にも言えますが、発想とは人格そのものです。何かに挑戦しようという発想は、その人の今までの経験をエスプレッソみたいにギュッと絞ったが故に出たアイデアなのでしょう。
料理で言えば自分が食べて旨かった料理を自分なりにもう一度反芻をして更なる旨さを狙うことに繋がっていきます。
豊かな発想をするためには豊富な経験が必要です。旨いモノを食べて悶絶する経験が多ければ多いほど旨いモノを作る強い土台を手にすることが出来ると思います。
今回、鴨のオレンジソースという古典を更に深く考えてみました。
今では鴨はパーツで手に入ります。胸、脚、ガラ、キモ、ハツなどなど別々に真空パックになって翌日には届きます。
鴨の胸肉を買って皮目焼いてロゼにしてスライスしてオレンジのソースをかける、
鴨のモモ肉をオレンジジュースと子牛の出汁で煮込む、
まあ美味しいですけどプロセスが美しくない。効率を求めてパーツで買ってしまうと効率の代わりにエスプリが薄まってしまう。
フランス料理のエスプリとは素材丸ごとを皿に載せることにあります。鴨ならば一羽で使い切る料理です。ガラでフォンをとり、煮詰めてソースを作り、肉はそれぞれの持ち味を活かした調理とする。
今回はバロティーヌと言って、鴨の背中から肉を開くように剥ぎ取り、胸肉は残してモモ肉と内臓で詰め物を作り、またお腹の中に戻して縛り上げ、取り除いた骨から煮汁とソースを作るという全く無駄ないが故に手間と時間とストレスのかかる料理です。
いいじゃないですか、たまにはこんなのも。
ここは敢えて鴨のロワイヤルという名前でいきましょうか。
まずは丁寧に皮を剥がして一枚開きにします。
骨はぶつ切りにしてこんがり焼いて香味野菜とオレンジで出汁を取り、煮詰めて煮汁を作ります。
モモ肉と内臓で詰め物を作り、皮で包んで網脂で巻き込んで紐で縛り上げます。
網脂を焼き切り、結着するためにオーブンで焼きます。
骨からとった出し汁で3時間煮込みます。
煮込んだら冷蔵庫で締めてカット。
煮汁とオレンジを丁寧に煮詰めてソースを作り、その中で肉を温めて仕上げます。
最高じゃないですか。
1人前で肉150g、ソース50g、オレンジのスライスを入れてますので、解凍後に沸騰直前のお湯で10分ほど温めて下さい。開封して鍋で温めるとソースが煮詰まったり焦げ付いたりするので湯煎をオヌヌメします。
一人前¥1,450(税込1,566円)で発売、面倒くさすぎるので限定数を切ってまして売り切れ次第終了、当分出ないと思います。
https://tableogino.raku-uru.jp/