2020年03月12日
凄まじい本
今、私に密着取材してくれているジャーナリストさんの新刊です。
ジャーナリストや報道というよりノンフィクション作家さんというべきでしょう。
この本はちょうど3月11日に頂きました。
それぞれのエピソードは短く、丁寧な取材と細やかな構成で読みやすいものの、内容は非常にズッシリと重い。
人間は言葉を獲得してから言葉を通して世界を捉えますが、名前のあるモノが世界を形作るのではなく、人間社会における本質的な世界観とは言葉にできないような怒りや悲しみ、情熱、愛、畏れという抽象的にしか表現できない文脈にこそ存在するのでないでしょうか。
社会とは合理的で予定調和だと思っていたものがいきなり壊れ、予定不調和になった時に現れる非社会的で野生動物的な反応なのかも知れません。
当たり前としてあった日常性は地震と津波という非日常によって破壊され、生き残った人は亡くした家族と霊的体験によってもたらされる喜びと、目が覚める度に繰り返される別れに叩きのめされながらも生きる事の後押しを受ける物語を紡いでいきます。
そうした一言で言い表せない悲しみや苦しみや怒りの物語は次第に宗教性を帯び土着的な人間社会形成の土台になって民族性となるのではないでしょうか。
体験者の話は再現性もなく事実として証明するには難しい話ばかりですが、体験者にとってはこれらの話は紛れもない事実であり、それこそが震災という惨禍の記憶そのものなのだと思います。
霊体験や霊の存在を信じるかどうかというオカルトな話として受け止めると、この本の本質を見誤る事になります。
もう一冊頂きました。
この本はこれから読みますが、題名からしてヤバさ半端ないです。