2019年07月05日
仔牛とフォアグラ、干し椎茸のテリーヌ
かつて、今は亡きジャン・トロワグロが来日して銀座マキシムでガラディナーを行った際、厨房には当時難しかったフランスから輸入されたキノコがたくさんあり、それを見たジャンはこう言ったそうです。
日本には椎茸やシメジやナメコなど素晴らしい食材があるのに、なぜわざわざフランスの鮮度の悪いキノコを仕入れるのだ、と。
フランス料理とは思想であり、メソッドである、その土地のいい食材をフランス料理の技術で取り組む事で無限の広がりを見せる。フランス料理はどこでも何を使っても表現できる。
私はそう言う意味なのだと思いました。
提供する予定だったキノコとホタテのテリーヌに使うドライセップを辞め、干し椎茸のマデラ酒煮を加えて味の骨組みを作ったと師匠から聞いていました。
私もそれを聞いて以来、キノコのテリーヌのベースには干し椎茸のベルモット煮を加えて味の輪郭をはっきりとさせることにしてます。
今回は子牛のレバーとフォアグラをガル二チュールとして酒で煮込んだ干し椎茸を形を残して加えました。
ムニっとした食感、どこか懐かしい香り、それでも完全にフランス料理になりました。
フランス料理は思想的であるという辺りが、包丁の冴えや器使いなどの情緒的な和食との大きな違いなのだと思います。